《私の本棚 第百四十二》 平成21年1月号
「黒 髪」 連城 三紀彦 作
1948年生まれの直木賞作家。京都市北区辺りを舞台に、男女のというより、女のまとわりつくような情念を、軽いサスペンスタッチで描いています。 主人公の高沢は、雑誌取材で訪れた京都で染色家の尚江と知り合い、親密な間柄になります。高沢の妻路子は心臓病で床に伏す日々を過ごしています。何も知らないふりをしていますが、すべてを見透かしており、主人が毎月東京から通って逢瀬を重ねていることを知っています。自分の黒髪を少し切って、京都の美しい清流に流してきてほしいと、主人に託します。この一つまみの黒髪が尚江の手に渡ります。それが二人の女のまとわりつく情念・怨念として表現されています。同じ黒髪と題して、祇園を舞台にした近松秋江氏の作品があります。しかしこちらの女は、この世の者ともあの世の者とも分かりかねます。おのおの方、足下にご注意。 |
京都八坂神社 良縁祈願 |
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