《私の本棚第百三十五》 平成20年6月
「怒りの葡萄」 スタインベック 作
1939年発表、ピューリッツァ賞受賞作で、30年代アメリカ文学の代表的作品とされています。1940年に映画化されて、今は書店で500円DVDを購入できます。 1933年からほぼ2年間テキサスから北はカナダまで砂嵐が吹き荒れ、農地を失ったオクラホマの農民約25万人が浮浪農民となってカリフォルニアで辛酸をなめ尽くすという筋書きです。書き出しでは主人公が誰なのかよく分かりません。読み進めるとトムという男性が主人公であると思えてきますが、全編を読み通すとトムの親兄弟、つまり一家族が主人公ではないかとも思えてきます。 絶望の淵に落ちようとするとき女達は強く、絶望の淵で怒りの気持を燃え立たせた男達はたくましく生きます。あらゆる困難を乗り越えてきた家族は、諦めることをせず前向きに生きていきます。ラストシーンは絶望と怒りを象徴的に表現しています。 折しもHP更新のきょうは、東北関東大震災(2011.3.11)から一ヶ月です。TVの映像では感じられないような、筆舌に尽くしがたい困難の極みを大勢の方々が一身に受けておられます。一人には一人の、十人には十人の、万人には万人の人生があり、悲しみ苦しみがあります。邪魔をせずに何かお役に立てることといえば、義援金をお送りすることくらいしか出来ませんが、日本中、否世界中の応援者の一員としての気持ちだけでも伝わればという思いで一杯です。 |
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