《私の本棚 第百四十五》   平成21年4月号

        「ボヴァリー夫人Madame Bovary)      フローベール 作

 Gustave Flaubert 1821 - 1880 フランス人作家。 フローベールはある作品を書き上げた後、友人二人に読み聞かせましたが、酷評されます。一人は暖炉に放り込んでしまえと言い、今一人は 「ドラマール事件を書け」 といいました。 ドラマール事件とは、フローベールの父は市立病院長で名医でしたが、その弟子ドラマールも開業していました。ところがその妻が情夫をつくった挙げ句自殺をします。それを題材として書くことを勧められたのです。
 この作品が読みづらいと感じるのは、人称代名詞がそれぞれ複数用いられることが多く、読んでいて整理しづらいことでしょうか。大まかな内容は、修道院生活をしていた慎ましやかで美しい女性エンマは、開業医シャルルの妻になります。ボヴァリー夫人となったエンマは、いつしか単調で平和な幸せに飽きてきます。その心の隙間に忍び寄ってくる男達と不倫を重ねるのですが、男達は結構打算的で、逆にボヴァリー夫人の方がのめり込んでいきます。エンマをもてあそぶ男と、嗅覚鋭い商売人に次々と商品を買わされ手形のジャンプを繰り返します。エンマは男に捨てられた上、借金で破産差押えの身になることが判ると毒 (ヒ素) を食べて自殺。夫のシャルルは、妻は精神的な病から自殺したものと嘆き悲しみ、後を追うように死亡します。
 この小説を読んでいてゾラの 「ナナ」 (第118号で紹介)を思い浮かべました。それもそのはずで、解説によると後世の文学では、モーパッサンやゾラを生み出す大きなきっかけになったということです。

 1857年作で、因みにボヴァリー夫人のモデルは自分自身 (男性) であると言っています。
高瀬川、あんな本こんな本




 高瀬川
 
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