《私の本棚 第百十三》      平成18年8月

           「自分の穴の中で」
    石川 達三 

 秋田県横手生まれ。作品は朝日新聞に昭和29年11月〜30年6月まで連載されたものです。達三氏は自分のことを 「読書家ではない」 と言っていたようです。
 登場人物は全員が立派なエゴイスト。程度の差こそあれ、他人の心を思いはかる気持を持っていない。最初はまとまりのある間柄のように見えるが、次第にエゴが絡み合ってバラバラになっていきます。否もしかしたら最初から纏まっていなかったのかも知れません。当時としては、世相を強調して描いたのかもしれませんが、今となればあまり違和感がなく読めます。その違和感の無さが反って恐いとも言えます。

 この本を読んでいると以前ご紹介したゾラ作 「居酒屋」  を思い出しました。何故なのか分からなかったのですが、氏を紹介した文章に 「昭和3年から10年くらいの間に、読んで共鳴したのはゾラだ」 とありました。上手く表現できませんが、何処か根底に似たような臭いを感じるのです。 
シシウド、伊吹山、測候所、あんな本こんな本



 伊吹山 シシウドと測候所
 
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