「あまりにかはいい島だから

ここには惜しい島だから、

貰ってゆくよ、綱つけて。」

北のお国の船乗りが、

ある日、笑っていひました。

うそだ、うそだと思っても、

夜が暗うて、気になって、

朝はお胸もどきどきと、

駆けて浜辺へゆきました。

弁天島は波のうへ、

金のひかりにつつまれて、

もとの緑でありました。

　明治36年、山口県長門市仙崎の書店に生まれた。本名テル。大正12年頃から 「みすゞ」 の名で童話・童謡雑誌に投稿し、愛好家の間で知られていました。西条八十にも会う機会があり、中央の同人誌にも参加しましたが、下関で結婚・出産後に心身共に調子を崩して26歳で自死。弁天島は仙崎港の目と鼻の先にあります。