《私の本棚 第百四十三》   平成21年2月号

    「パイの物語」   ヤン・マーテル 

 作者はスペイン生まれ。外交官の父とともに少年時代を色々な国で過ごしました。この海難をテーマにした作品は、アメリカで映画化が決まっています。
パイとは主人公のあだ名です。小さな動物園をしていた父が、カナダのモントリオールで再開園するためにインドのマドラスから動物とともに出港するのですが沈没。生き残ったパイとオランウータン・ハイエナ・トラは一艘の救命ボートで一年近く漂流します。オランウータンとハイエナはたちまちトラに食われますが、パイは何とか優位を保ちながらメキシコ沿岸に漂着します。トラは一目散に上陸遁走。小さなボートの中での、パイとトラの攻防は良い映画になるのではないかと思います。この作品を引き締めているのは、漂流中のトラとの同居話を失笑されて、作り話をする所。質問者に迎合した凄惨な内容の作り話の方が真実味を帯びており、実際に体験した事は嘘だと疑われる意外性です。
冬の日本海、あんな本こんな本、東尋坊





 冬の日本海
 
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