《私の本棚   鎮魂と克復そして新生の祈りを込めて》         平成23年6月22日

     「げんげと蛙」    草野 心平 作詩      …… 鎮魂の祈りを込めて

  作者は1903年、福島県岩城郡上小川村 (現、いわき市) 生まれ。曲折を経て作詩家として専念してこられました。
その行動から、多くの知己を得たようです。孫文、タゴール、山村暮鳥、中原中也、宮沢賢治、高村光太郎などが挙げられます。特に光太郎のことは心底慕っていたようです。1988年没。この詩人草野心平のことは先般、福島県相馬市在住の方に教えていただきました。そのお言葉の中から優れた詩の持つ力に気付かせても頂きました。ここにご紹介するのは小学生でも読めるものですが、何度も繰り返して読んでいると、深い哀しみと愛と生きる勇気をうたっているように思います。
 読後感想は、現実の前に虚しく非力で書けません。東北地方被災の生中継映像、中でも南三陸町役場女性の避難を呼びかける声は生涯耳から離れることはないでしょう。高台からの生中継時、押し寄せる水の中、私はその女性の声を、到底、肉声とは思いませんでした。どのような言葉を捧げればいいのか見つかりません。 

        【ぐりまの死】

ぐりまは子供に釣られて叩きつけられて死んだ
とりのこされたるりだは
菫の花をとって
ぐりまの口にさした
半日もそばにいたのでくるしくなって水に這入った
顔を泥にうずめていると
かんらくの声々が腹にしびれる
泪が噴上げのように喉にこたえる
菫をくわえたまんま
菫もぐりまも
カンカン夏の陽にひからびていった
     (ぐりまるりだ…蛙の名前)  (菫…スミレ) 

        【秋の夜の会話】

さむいね
ああさむいね
虫がないてるね
ああ虫がないてるね
もうすぐ土の中だね
土の中はいやだね
痩せたね
君もずいぶん痩せたね
どこがこんなに切ないんだろう
腹だろうかね
腹とったら死ぬだろうね
死にたくはないね
さむいね
ああ虫がないてるね
    
(冬眠に入る前の蛙の会話) 

       【わが叙情詩】 から
くらあい天だ底なしの。
くらあい道だはてのない。
どこまでつづくまっ暗な。
くらあい道をあるいてゆく。

   
(40代半ばの作)  (天だ…⇒そらだ) 

      【道】
いくどもいくども突きあたり。
真空圏にのめりこみ。
いくどもいくども。
よろけよろけ。
たちあがり。
ああその果てに。
己の過信にどきりとし。
行わざるものの。
それは錯覚にすぎないと。
よろけなどとはずいぶん立派なお話だと。
天日のもとに泪し。
決意し。
そして新しく行こうとします。
わが行く道よ正しくあれ。
石ころごろごろたりともわが往く道よ大きくあれ。
   
(天日…⇒てんじつ) 

  【でんでんむしのかなしみ】   新美 南吉 作       …克復と絆を祈り

いっぴきの でんでんむしが ありました。
あるひ その でんでんむしは たいへんなことに きが つきました。
「わたしは いままで うっかりして いたけれど、 わたしの せなかの からの なかには かなしみがいっぱい つまって いるのでは ないか」
このかなしみは どうしたら よいでしょう。
でんでんむしは おともだちの でんでんむしの ところに やっていきました。
「わたしは もう いきていられません」
と そのでんでんむしは おともだちに いいました。
「なんですか」 と おともだちの でんでんむしは ききました。
「わたしは なんという ふしあわせな ものでしょう。わたしの せなかの からのなかには かなしみが いっぱい つまっているのです」
と はじめのでんでんむしが はなしました。
すると おともだちの でんでんむしは いいました。
「あなたばかりでは ありません わたしの せなかにも かなしみは いっぱいです」
それじゃ しかたないとおもって、 はじめの でんでんむしは、 べつの おともだちのところへ いきました。
すると その おともだちも いいました。
「あなたばかりじゃ ありません。 わたしの せなかにも かなしみは いっぱいです」
そこで、 はじめの でんでんむしは また べつのおともだちの ところへ いきました。
こうして、 おともだちを じゅんじゅんに たずねていきましたが、 どのともだちも おなじ ことをいうので ありました。
とうとう はじめの でんでんむしは きが つきました。
「かなしみは だれでも もって いるのだ。 わたしばかりでは ないのだ。わたしは わたしのかなしみを こらえて いかなきゃ ならない」
そして、 この でんでんむしは もう、 なげくのを やめたのであります。 

              【道 程】 より    高村光太郎  作詩      …明日の新生を祈り

      道 程

     僕の前に道はない

     僕の後ろに道は出来る

     ああ、自然よ父よ

     僕を一人立ちにさせた広大な父よ

     僕から目を離さないで守る事をせよ

     常に父の気迫を僕に充たせよ

     この遠い道程のため

     この遠い道程のため

仙台七夕祭り、あんな本こんな本






 
    ・・・・・・小2の孫に被災地を見せるために、車を運転して2011.8.6−7 一泊二日で仙台へいきました。
       時間の都合で塩釜の港と若林区、荒浜小学校近くへいきました。
       子供の心にうっすらとでも、大勢の人たちの痛みが記憶として残れば良いと思います。・・・・・・


   たまたま七夕祭りが催されていました。一日も早い、物心両面の復興と回復を祈ります。
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